スポーツ整形
スポーツ整形

スポーツに関係して発生する運動器のトラブルは、大きく「スポーツ外傷」と「スポーツ障害」に分けることができます。
「スポーツ外傷」は明らかな受傷起点のある「けが」であり、外から加わる1回の大きな力(衝撃)によって起こる筋肉やスジ、関節や骨を痛めたものをいいます。具体的には捻挫、肉離れ(筋挫傷)、軟骨損傷、脱臼、骨折などと診断されます。あの日のあれをやっている時に痛めた、と言えるものがスポーツ外傷になります。
これに対して「スポーツ障害」は、繰り返して小さな力(ストレス)が筋肉やスジ、靭帯、骨や関節軟骨などに加わることで起こります。一定の部位で慢性的な疼痛や動かしにくさが持続している状態で、原因としては使いすぎ(オーバーユース)によるものが多くみられます。いつ痛めたとははっきりと言えないけれど、だんだん痛くなってきたというのがスポーツ障害です。
ただし、これらはスポーツで起こったものばかりとは限りません。例えば、料理でフライパンや鍋をたくさん使用したり、大工仕事で金槌(かなづち)などをたくさん使用してもテニス肘(外側上顆炎)になります。
また、スポーツ傷害(けが)に対して早期に適切な処置をしなかったために、障害が起こることもあります。けがが治りきらずにスポーツなどを続けていたためにずっと痛みが続く状態となり、スポーツ傷害なのかスポーツ障害なのか区別がつきにくくなることがあります。医師にご自身の痛みについてお話いただく際は、まず、スポーツ外傷なのかスポーツ障害なのかを意識して、痛みの発生時期や原因、時間経過による変化についてもしっかり話せると、適切な治療を受けやすくなります。
捻挫や打撲などの外傷では「この程度の痛みなら大丈夫だろう」と、医療機関へは行かずに市販の湿布薬などで処置してしまうことも少なくないでしょう。しかし、受傷した部位の腫れが強かったり、翌日のほうが痛みがひどくなったという状態であれば、受診をおすすめします。痛みが強く関節が腫れている場合、靭帯が部分的に切れたり、完全に断裂(靭帯損傷)していることもあります。骨折などは痛みが強く、長引くため放置されることは稀ですが、靭帯損傷では、時に数日経過すると痛みが楽になることがあります。そのため、放置され後々手術が必要になったという患者さんがスポーツ外来にしばしば紹介されてきました。なので早期に正確な診断を受けることが大切です。
スポーツ外傷では、受傷の部位やその程度によってギプス固定や手術が必要な場合もありますが、多くは保存的治療で時間の経過とともに痛みも治まります。治療や運動器リハのプログラムも立てやすいですが、長引く痛みが残ったり、靭帯損傷の場合、関節の緩みが残ることがあり、それへの対処が課題となります。
一方、スポーツ障害は使いすぎや体のバランス、扁平足、姿勢、柔軟性などが原因になることが多く、その部位の治療とともに根本的な原因を改善していく必要があります。たとえば、体が硬いことが原因でフォームがくずれ、痛みが生じたり、個々人に合わない練習内容(トレーニング方法や練習時間と休息のバランス、施設環境)も痛みの原因になります。まず、メディカルチェックをしっかり受けて、筋力のバランスや柔軟性、成長度、体力など、そのスポーツ種目に対する適性をみてから練習プログラムを立てることが大切です。スポーツ障害の予防には、ウォーミングアップやクールダウン、日常でのコンディショニングが効果的です。
野球肘とは、投球動作の繰り返しによって起こる肘の障害で、肘関節を保護している軟骨や靭帯、筋肉、腱などが損傷する病態の総称です。医学的名称は上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)といいます。肘への負荷が過剰になることが原因で、痛みの部位によって内側型、外側型、後方型に分類されます。
内側型は、肘の内側に過剰な負荷がかかり、靭帯の牽引力によって腱や軟骨が損傷します。代表的な病態には内側側副靱帯損傷(ないそくそくふくじんたいそんしょう)、内側上顆裂離骨折(ないそくじょうかれつりこっせつ)があります。
外側型は、肘の外側にある骨や軟骨が剥がれたり傷んだりすることで炎症や骨折が生じます。代表的な病態には離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)があります。
後方型は、上腕骨後方にある凹んだ部分(肘頭窩:ちゅうとうか)にストレスがかかることで、疲労骨折や骨棘(こつきょく)形成が起こります。代表的な病態には肘頭部疲労骨折(ちゅうとうぶひろうこっせつ)があります。
治療では、投球を一時休止して安静に努めます。痛みが治まってきたら医師の指示のもと、競技への復帰と再発予防の観点から運動器リハを行います。骨折がある場合は手術となることがあります。
スポーツを活発にされているお子さんは、当院で行っている野球肘検診やメディカルチェックなどで定期的に肘の状況を確認しましょう。
野球肩とは、主に野球の投球動作を繰り返すことによって生じる肩関節障害で、野球以外でもテニスのサーブやバレーボールのアタックなど、腕を大きく強く振る動作を繰り返すスポーツで生じることもあります。肩関節を構成している骨や軟骨、筋肉や腱の損傷が原因で起こります。ジュニア期には特有の病態として上腕骨近位骨端線離開(じょうわんこつきんいこったんせんりかい:リトルリーグショルダー)があります。子どもの骨には骨端線という成長軟骨があり、この部分は力学的に強度が弱く、過度に負荷がかかることで損傷します。診断にはレントゲン検査が必要となります。野球肩の痛みは投げる時に起こり、安静にしていれば痛みません。治療の基本は運動器リハを中心とした保存療法で、投球フォームの見直しや体幹トレーニングなど肩以外の状態も整えるコンディショニングを行います。
上腕骨外側上顆炎は、「テニス肘」や「ゴルフ肘」とも呼ばれています。肘から前腕には、手首を動かしたり、指を曲げたりする筋肉が重なるように存在し、その中の一つに橈側手根伸筋(とうそくしゅこんしんきん)という筋肉があります。テニスなどで同じ動作(主にバックハンドストローク)を何度も繰り返し、過度な負担がかかることにより、この筋肉に亀裂や炎症が生じて痛みが起こると考えられています。また、日常生活の中で毎日包丁を握る、フライパンを使用する、ゴルフでクラブを握るといった握る動作の繰り返しや、スマホやパソコンの操作のしすぎで発症することもあります。スマホやパソコンを使用する時には良い姿勢を心がけましょう。
安静時には痛みは少なく、「タオルを絞る」、「ドアノブを回す」といった手首を曲げたりひねったりする動作で、肘や前腕に痛みを感じます。治療では、肘だけでなく手指や手関節部も安静にします。消炎鎮痛剤の投与と装具療法(テニス肘用バンドなど)を併用する保存的療法が基本です。また、当院で行っている超音波エコーを用いた注射により疼痛の改善やリハビリ効果を高めることが期待されます。保存的療法により改善が見られない場合は、手術治療が検討されます。
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